記事一覧

ウェーバーのピアノ協奏曲

 ウェーバーというと、ワーグナーへと連なるドイツ歌劇の基礎を築いた、と音楽史のなかでは紹介されるのですが、かといって思いつく曲といえば『魔弾の射手』と『舞踏への勧誘』ぐらいで、イマイチ地味な存在に甘んじている感があります。

 これら以外では『オベロン』が割と有名のようで、単独でも取り上げられる序曲は、リストによって超絶技巧のピアノ版にも編曲されています。また、「海よ、巨大な怪物よ」と云う長大なアリアは、マリア・カラスの録音を聴いて知ったのですが、カラスの歌唱ともども、まるで荒波の逆巻く海のような雄弁さを持っていると思います。

 そんなウェーバーはピアノ協奏曲を三曲遺しているそうです。番号つきなのは二曲で、もう一曲は「小協奏曲」と名付けられています。おそらく、この三曲のなかでもっともよく知られているのは「小協奏曲」だと思われますが、私はむしろ、番号つきの二曲の方が好きです。

 深い内容を期待する曲ではないのだと思いますが、ロマン派初期の初々しさにのせて、華麗な技巧…といっても、分厚い華麗さではなくて、(良くも悪くも)バイエル的な、古典的な華麗さですが…が繰り出され、何の嫌みもなく爽やかに聞き流せる曲だと思います。褒めているのか貶しているのか自分でもわからなくなってきましたが、兎に角、爽やかな秋の初めに聴くにはいい曲だと思うのです。

トラックバック一覧

コメント一覧